<新可燃ごみ処理施設の発注事業者選定:約150億円>
 9月15日に鹿嶋市・神栖市が構成団体となる鹿島地方事務組合で新可燃ごみ処理施設整備事業の優先交渉権者が決定されたとの発表があった。公募型プロポーザル方式という入札方式での決定だと言う。
公共工事の契約方法は競争入札が一般的で、指名競争入札と一般競争入札の2種類があり、予定価格が一定額を超えると一般競争入札となり、一定の資格要件を満たせば自由に入札に参加できる。談合やダンピングなどの不正を防止するために、総合評価落札方式により入札価格のみではなく技術提案を求め総合的な評価で競争させる方式の採用も増えている。また、契約金額が少額であったり特別な事情によって随意契約もある。今回の公募型プロポーザル方式は随意契約の範疇に入る。一定の資格要件を満たせば参加できる点では一般競争入札と同様で、やはり価格だけではなく提案内容を評価し「公平な審査」によって優先交渉権を獲得すると言う点では総合評価落札方式に似ている。しかし、今回の公募と落札者(優先交渉権者)の決定には不可思議な点が多い。
①そもそも事業計画(基本計画・3月策定)が7月まで公表されずに公募開始し、事業費(落札予定価格)の妥当性も確認できないまま事業が進んだこと。追加で必要となる中継施設や今後の施設維持管理費も未だ明らかになっていないため全体事業がチェックできない。
②国庫補助(復興特別交付税)の期限がギリギリで、実際に財源として見込めるのか不透明な状況のままであり、事業の進捗についても目標とする出来高が1年半あまりで50%と極めて高く余裕がない。
③ 公募に参加した事業者は当初3社あったが、締め切り直前になり2社が辞退したため1社のみの審査となった。
④ほぼ身内のみで構成する事業者選定の審査委員会(6名中1名のみ外部専門家)の公正さの担保。
⑤巨額の事業費と、工事期間3年半という巨大な公共工事のため慎重にかつ公正な手続きが必要だが、予算案の承認についても、事業者提案書類提出(実質上の落札)期限の直前となり強引な手続きではないのか疑問が残る。7月の神栖市議会臨時会では予算案が審議魅了のため専決処分となり、鹿嶋市議会臨時会では強引な議会運営・審議打ち切りによって賛否が分かれることとなり賛成多数で可決した。
 政府発注のコロナ禍対策で持続化交付金の支給事務が電通関連企業に丸投げされ、初めから一部の企業に有利な条件で発注されたのではないかなど不透明さが指摘されている今、市民に疑念や不信感を抱かれないように説明責任が問われている。

<コロナ禍後の地方自治体>
 今回は可燃ごみ処理施設の発注のみで関連施設と維持管理費についてはこれからの課題として残っている。コロナ感染症の収束も見えない中でコロナ禍以後の地方財政は大変厳しいことが予想される。経済への影響が中小企業だけではなく大企業の将来展望にも陰りが見えている中で、近年、甚大な被害をもたらす自然災害対策や、生命を守ることに直結する地域医療体制整備も喫緊の行政課題として残っている。20年前、地方分権一括法案によって地方の時代が始まることに期待したが、今や地方創生という中央政府の飴欲しさに陳情を繰り返す政治に逆戻りしてしまった。菅新政権には期待できないが、これからの数年が地方自治体が自立できるかの正念場ではないだろうか。